最近は、ご自身の老後や死後に備えて、終活をはじめる方が増えています。
その一つに自分の持ち物や財産を整理する「生前整理」があります。生前整理は自分が元気なうちにしておくことで、自分や家族の後々の負担を軽減することにもつながります。
今回は、生前整理をするメリットや、失敗しない生前整理の進め方について解説します。
終活の一環として生前整理を考えている方はもちろん、自分の親に生前整理を勧めたいと思っているご家族の方も、ぜひ参考にしてください。
目次
生前整理とは?遺品整理との違い
生前整理とは、人生の終わりに備えて、生きているうちにご自身で持ち物や財産を整理することをいいます。それに対して遺品整理は、ご自身の死後、遺されたご家族が、故人の生活用品や住居などを整理して片付けることをいいます。
このように遺品整理は、死後にご家族が行うのに対し、生前整理は元気なうちに自ら行うという違いがあります。また生前整理には、持ち物以外にも財産やデジタル遺品(パソコンのID/パスワードなど)も含まれるという点も違いの一つです。
生前整理で得られる5つのメリット
生前整理は手間がかかる作業ではありますが、それ以上に思わぬメリットも得られます。
次は生前整理を行うと、どのようなメリットがあるのかをみていきたいと思います。
①自分の死後、家族の負担を減らすことができる
人がお亡くなりになると、遺されたご家族は、故人の身の回りの生活用品や大切にしていたものを整理して片付ける遺品整理を行います。
しかしご家族を亡くされた後というのは、葬儀や法要、納骨の準備に加えて、行政手続きや相続のことなどやらなければいけないことがたくさんあります。そんな中、遺品を整理する作業は、ご家族にとって大変負担が大きいものです。また、業者に頼めば費用もかかってしまいます。
さらに最近は、スマートフォンやパソコンなどインターネット経由のサービスのIDやパスワードがわからず、解約に時間がかかってしまうなど、デジタル遺品にまつわる問題もあります。
生前整理をしておけば、ご家族がご自身の死後に味わうこのような負担を、少しでも軽減することにつながります。
②残りの人生を穏やかに過ごすことができる
生前整理で不用品を処分すると、当然部屋がスッキリします。また、本当に必要なものだけが残った整理整頓された部屋で過ごすことは、気持ちのゆとりにもつながります。
③自分の人生を振り返るきっかけになる
生前整理をしている間には、過去の自分にあらためて出会うことがあります。「あの時はこんなことをしていたんだなぁ」と、懐かしく思ったり、久しぶりに昔の友人に会いたくなったりするかもしれません。そんなふうに生前整理は、自分の人生を振り返るきっかけをくれることにもつながります。
④相続トラブルを防ぎ、お金を有効活用できる
生前整理で財産の整理をしておくことで、遺産相続について考えるきっかけにもなります。
また所有財産をリスト化し、どのように相続人に配分するかを生前に決めておくことで、後々の相続トラブルを防ぐこともつながります。生きている間であれば、生前贈与を行なって相続税を軽減するなど、対策を練ることもできるでしょう。
このように生前整理をすることで、無駄なお金を見直し、節約やお金の有効活用にもつなげることができます。
⑤不測の事態に備えられる
生前整理は、自分の死後のために行うものと思われるかもしれませんが、実は、生きているうちに起こるかもしれない不測の事態に備えることにもつながります。
たとえば、ご自身が認知症を患い施設に入居することになったとしても、生前整理を行なっておけば、引越し作業などにかかるご家族の負担も少なくてすむでしょう。
生前整理はいつからはじめる?
生前整理をはじめる時期は人それぞれです。断捨離やミニマルライフという言葉が定着している最近では、20〜30代で生前整理をはじめる人も増えてきているようです。誰しも、自分の死の時期を予測することはできないため、生前整理をはじめる時期に早すぎるということはありません。もちろん遅すぎることもないため、気になった時がはじめ時だと思って取りかかりましょう。
ただし、ご自身が元気なうちにはじめるというのがポイントです。そのため体力や気力が充分ある40代〜50代にはじめるのがおすすめです。
もし、何かきっかけがほしいという場合は、ご自身が還暦を迎えたタイミングや、お子さんが成人したタイミング、仕事を定年退職したタイミングなど、何らかの節目に合わせて行うのもよいでしょう。
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生前整理はどうやって進める?
次は生前整理の進め方について解説します。
STEP1 財産目録を作る
まずは自分の財産を把握するために、財産目録を作成しましょう。ちなみに財産とは、ご自身の貯金だけではなく、以下のようなものを含みます。
銀行や郵便局などの預貯金 / 有価証券 /不動産 /車 /宝石や時計 /美術品や骨董品
これらの財産をリスト化しておくと、遺産相続の際に遺されたご家族が一目でどれだけの財産があるのかがわかります。
故人の財産を調べる作業は、残されたご家族にとって思いのほか大変な作業なので、これだけでもかなりの負担軽減につながるでしょう。
また目録を作ったら、弁護士や税理士などの専門家に、今からできる節税対策を相談してみてもよいと思います。
STEP2 必要なものを選ぶ
次に、身の回りのものの中から、本当に必要なものだけを選び出します。不要なものは処分し、捨てられないものについては、フリマアプリなどを利用して売ったり、友人知人でもらってくれる人がいたら譲るといったように、処分せずに済む方法を考えましょう。
STEP3 デジタル生前整理をする
身の回りの整理が終わったら、今度はデジタル周りの生前整理をします。
パソコンやスマートフォンのログインIDからはじまり、音楽や映像のサブスクリプションサービス、SNSのアカウントなどインターネット経由で契約したさまざまなサービスのログインIDや契約メールアドレス、パスワードをどこかにリスト化して残しておきましょう。契約はしているもののあまり利用していないサービスは、このタイミングで見直しておくと節約にもつながります。
このようなサービスは月毎に費用が発生するものも多いため、亡くなった後にご家族がパスワードがわからず何ヶ月も解約できないという状況に陥ることがよくあります。その分お金がかかり遺産が減ってしまうことにもなるため、誰がみてもわかるようにリスト化しておくことが大切です。
STEP4 文章化して残す
最後に、財産やデジタル関連のログイン情報など、自分の死後、家族に伝えるべきことは、生前にできる限り文章化して残しておきましょう。
その方法については次章で解説します。
生前整理の内容や伝えたいことを文章化して残す方法
遺されたご家族へ伝えたいことは、遺言書やエンディングノートを通じて、亡くなった後に伝えることができます。
遺言書を書く
一つは遺言書を書く方法です。遺言書では財産の分配方法や祭祀主宰者の指定などの遺志を伝えることができます。
遺言書を書かなくても、財産は民法で定められた規定に従って法定相続人に相続されますが、それ以外の配分で相続させたい場合や、法定相続人以外にも相続させたい場合、相続人の中に相続させたくない人がいる場合など、財産の分配の仕方に強い希望がある場合は、法的効力を持つ遺言書を書き残しておくようにしましょう。
遺言書には大きく3つの種類があり、最も確実性が高いのは公証役場で公証人と呼ばれる人に作成してもらう「公正証書遺言」です。
エンディングノートを書く
遺言書のように法的効力は持ちませんが、エンディングノートを残しておくことで、自分の遺志や必要な情報を、遺された家族に伝えることができます。
たとえば前述の財産目録やデジタル遺品のリスト化はもちろん、どのような葬儀を希望しているか、葬儀に呼んでほしい人はいるか、お墓に対する希望はあるかなど、死後に必要なことから、家族や友人へのこれまでの感謝の気持ちまで、エンディングノートに自由に書き残すことができます。
エンディングノートとは?書く内容や書き方を解説します 最近は、「終活」の一環としてエンディングノートを作成している方も多いと思います。 エンディングノートとは決して死へ向かうために書くものではなく、残りの生をどのように生きるかを考え、頭の中を整理するために作成するものです。 |
財産の管理は、家族信託という選択肢も
また、財産の管理に関しては、家族信託を利用するという選択肢もあります。
家族信託を利用すると、ご自身の財産のうち「その財産から利益を得る権利」を残したまま「財産を管理、運用、処分する権利」のみを家族の誰かに移すことができるようになります。そうすることで、遺言書ではできない財産処分ができるようになったり、万が一認知症になってしまった場合にも、自分に代わって家族が財産を管理してくれるため安心です。
ただ家族信託は、ここ10年ほどの比較的新しい制度です。専門知識も必要になるため、利用する際には、トラブルにならないためにも専門家に相談することをおすすめします。
生前整理は思い立った時に少しずつでもはじめてみましょう
ここまで、生きているうちに身の回りのものや財産を整理する生前整理について、メリットややり方を解説してきましたが、いかがだったでしょうか。
元気なうちは、自分の死について考える機会は少ないかもしれませんが、元気な時ほど判断力も決定力もあり、スムーズに生前整理を進めることができます。これを機に、ご自身の人生の終わりに備えて、必要な準備をはじめてみてはいかがでしょうか。
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